Öffen(オッフェン)プロデューサー兼デザイナー日坂さとみ氏インタビュー

一目見ただけで心がときめく、洗練されたデザインの靴たち。

Öffen(オッフェン)のラインナップは、まるでアートピースのように美しく、軽やかで、自由だ。だがその裏側には、すべてがリサイクル素材で構成され、無駄な資材を一切使わないという、徹底した環境配慮の思想が息づいている。華やかさと、サステナビリティの本質が共存する靴。

今回は、その世界観を築き上げたプロデューサー・日坂さとみ氏に話を聞いた。

大阪・関西万博2025を起点に関西の未来を描く― ドリアイイノベーション合同会社 代表社員 林俊武氏インタビュー プロフェッショナル顧問協会代表理事 齋藤利勝氏インタビュー

日坂さとみ(ひさか・さとみ)


セレクトショップでクリエイティブディレクターとして商品企画・ブランディングに従事し、15年以上にわたり靴づくりに携わる。現在はサステナブルシューズブランド「Öffen(オッフェン)」のプロデューサー兼デザイナーとして、ファッションとサステナビリティの両立を目指した取り組みを行っている。

靴づくりの原点にある「気づき」と「問い」

オッフェン代官山

Öffen(オッフェン)の立ち上げは、偶然と必然が交差する中で始まった。アパレル業界でのキャリアを経て、出産を機に一度現場を離れた日坂さとみ氏。子ども服の制作に関わる中で、「本当に必要なものは何か」という問いが芽生えたという。

子ども服は、流行に左右されず、機能性と普遍性を兼ね備えている。半袖一枚でも重ね着で調整できる柔軟性や、キャラクターやデザインもいつ見ても「かわいい」と思えるものが多い。こうした経験が、アパレルのスピード感に疑問を感じていた日坂氏にとって、価値観の転換点となった。

その頃、ベトナムで出会ってから交流のあった株式会社OZ代表の岩本氏から、「靴のブランドを一緒に立ち上げないか」と声がかかった。25年にわたり靴に関わってきた経験と、「0からつくる」ことへの期待が重なり、Öffenの構想が動き出した。「やるか、やらないか」を何度も自問しながらも、「好きだからできた」と語る日坂氏。

その姿勢は、母としての視点とクリエイターとしての情熱が融合した結果である。

工場の空に見た、サステナビリティの必要性

Öffenの靴づくりは、単なるデザインや機能性の追求にとどまらない。

日坂氏が強く意識するのは、「環境への配慮」である。中国の工場を訪れた際、いつも曇り空で青い空が見えないことに気づいたという。原因は、工場からの煙や廃棄物による大気汚染。工場内に入れば、化学薬品の匂いが鼻を突いた。この体験が、サステナブルなものづくりへの決意を固める契機となった。

Öffenでは、ゼロ・ウェイスト(廃棄物を出さない)を理念に掲げ、製品開発に取り組んでいる。

靴の木型づくりには、通常の10倍の時間をかける。見えない部分にまでこだわり、不要な資材は一切使わない。妥協のない姿勢が、製品の完成度を高めている。

素材選びにも徹底したこだわりがある。
使用済みペットボトルから再生されたポリエステル糸を採用。通常の糸よりも丈夫で、靴に最適であると同時に、環境負荷の低減にもつながる。またコスト面での負担はあるものの、トレーサビリティが十分に証明されるアメリカ製を選択。

こうした選択の積み重ねが、Öffenの靴を唯一無二の存在にしている。

顧客との「共創」がブランドを育てる

Öffenの魅力のひとつは、顧客との親密なコミュニケーションにある。ブランドのローンチはコロナ禍の真っ只中であったが、オンライン販売にとどまらず、POPUPやワークショップなどリアルな接点を大切にしてきた。靴は「履いてみないとわからない」商品であるからこそ、実際に足を入れてもらう体験を重視する。

日坂氏は、アパレル時代から「お店はモノを売るだけの場所ではない」と考えていた。商品を通じて思いを伝え、顧客と対話する場。Öffenの店舗では、デザインやかわいさに惹かれて来店した顧客が、サステナブルな背景を知るきっかけを得ることが多いという。

SDGsに対する関心や理解の深さは多様であることを尊重しながら、Öffenでは無理なくその背景に触れてもらえるような接点を大切にして、自然なコミュニケーションの中で、価値観が共有されていく。この「共創」の姿勢が、ブランドの信頼と共感を育んでいる。

異業種との協業が生む、新たな循環

Öffenは、通常であれば廃棄される素材を活用し、新たな価値を生み出している。
共通するのは、「少しでも捨てたくない」という思い。こうした理念を共有できる企業やブランドとの協業が、持続可能な循環を生み出している。

また協業において重視するのは、「継続性」である。

一度きりのアウトプットではなく、その先に広がりを持たせること。たとえば最近では、廃棄されるシャンプーボトルのリサイクル糸を使った靴づくりをきっかけに、同素材でニットの洋服の試作も進行中である。

開発効率や移動によるCO₂排出の観点からも、日本国内で完結する生産体制を目指しており、今秋のリリースを目指しているという。

万博で注目、Öffenの靴が歩むサステナブルな未来

2025年の大阪・関西万博では、大阪ヘルスケアパビリオンのユニフォームにÖffenの靴が採用された。テーマは「リボーン」。
一時的に着用するユニフォームであっても、使用後の循環まで考慮するという姿勢に共感し、協業が実現した。万博専用カラーで制作された靴は、お客様からも好評を得ている。

今後の展望としては、「急がず、確実に」事業を展開していく方針である。Öffen Walks for Goodという様々なチャレンジを通じて、ウェルネスやケアの領域にも貢献していく。

ブランドのミッションは「一歩ずつ、心地よい方へ」。靴というプロダクトを超えて、ライフスタイル全体に寄り添う存在を目指している。


Öffenの靴は、単なるファッションアイテムではない。日坂さとみ氏の気づきと行動が、社会に静かな波紋を広げている。足元から始まるサステナブル。その一歩が、未来を変える力となる。

【万博特別企画!】クチコミで見つかる大阪・関西万博オススメスポット!今すぐクチコミをチェックして、行ったら感想も投稿しみんなで万博を盛り上げよう!→クチコミ万博はこちら