企業の課題解決を支える「顧問」という存在は、今大きな変革の時を迎えている。 全国に20万人以上いる企業顧問の中でも、成果を認められた約340名のみが所属する「プロフェッショナル顧問®協会」。
従来の顧問像は、主に企業の外部顧問として、企業の顔役としての役割を担うことが一般的であった。
しかし、顧客の課題解決に真摯に向き合い、クライアントと共にハンズオンで問題を解決していく「伴走者」としての顧問像が求められるようになり、その役割が大きく進化した。
この変革を最前線で牽引してきたのが、齋藤氏である。
「共創」という言葉が世間に注目される前から実践的に取り入れ、顧問活動の進化を支えてきた彼に、その想いとビジョンを聞いた。

一般社団法人プロフェッショナル顧問®協会代表理事。株式会社STeam代表取締役社長。1968年生まれ。大学卒業後に株式会社リクルートへ入社。その後転職し、ソニー株式会社の映画・ゲーム・音楽子会社を経て、2012年独立。楽天株式会社やUUUM株式会社などの顧問・アドバイザーを務めるかたわら、大学院で経営などを学び直す。顧問を務めた企業は330社を超える。2016年、3社以上の企業推薦を受けた人材のみが入会できる「一般社団法人プロフェッショナル顧問®協会」を設立、代表理事に就任

顧問の存在意義
現代社会はますます複雑化しており、企業経営においても従来の手法や安定したパターンだけでは、持続可能な成長を実現することは難しくなっている。企業が直面する課題は多岐にわたり、単に過去の成功体験に頼り続けるだけでは、これからの競争に勝ち残ることはできない。そのため、企業は新たな視点やアプローチを取り入れ、柔軟かつ戦略的に進化する必要がある。このような時代において、企業経営に対する深い理解と新たな視点を提供できる存在が求められている。それが顧問の役割である。
齋藤氏は、前職リクルート、ソニーでの経験を通じて、顧問として企業に対して革新的なアドバイスを提供してきた。特に、ソニーのエンターテインメント業界における長年の経験は、単なるビジネスアドバイスにとどまらず、企業戦略やブランド価値を根本から見直す深い洞察を与えている。齋藤氏は、これまでの業界経験を生かし、企業の未来を切り開くための戦略的なアドバイスを行い、企業が持続可能な成長を遂げるためにどのような方向性を取るべきかを示唆してきた。
齋藤氏の提案で特徴的なのは、「商品」「サービス」と「エンタメ」という異なる業界を融合させることにより、新たなビジネスモデルを創出する点である。例えば、機能性を持つ靴下と世界的に有名な日本の人気キャラクターを掛け合わせるというアイデアや、今でも人気を誇る少女漫画と化粧品を組み合わせた新しい商品展開など、彼の発想は常に予想を超えるクリエイティビティに満ちている。
「今やアニメを代表とする日本のエンタメIPは、単なる子供向けのコンテンツにとどまらず、大人にも広く支持されるようになった。特にアニメは、その独自の文化や世界観が、多くの人々に長期間にわたって影響を与える力を持っている。また、アニメはグローバルな市場にも容易に展開できるため、特にアジア市場における商品の展開において、そのエンタメ要素が大きな力を発揮する。」
アジア市場はエンターテイメントが経済活動に与える影響が大きいため、アニメをはじめとする日本のIPコンテンツ力を活用した商品開発は、新しい客層を引き連れ、企業にとって非常に有益な戦略となる。
齋藤氏は現在の商品開発だけでなく、人材採用においてもエンタメの影響力を感じていると述べている。映画やアニメ等とコラボをしたり出資をした企業には、そうしたエンタメIPに関心を持つ層が、新卒採用に応募するようになったというクライアントからの声を聞いているという。
アニメのコンテンツ力が企業の魅力を高め、結果として人材確保にも大きな影響を与えている。これもまた、顧問として齋藤氏が企業の課題に対して真摯に向き合い、彼自身の得意領域を掛け合わせることで生まれた「化学反応」の一例である。
環境分析の重要性
齋藤氏が長年の経験を通じて見てきた事実によれば、確かにボトムアップ的な社内リソースだけでスケールした中小企業の例は存在する。しかし、そのようなケースは稀であり、多くの成功事例では外部リソースを柔軟に活用しているという。中小企業が限られたリソースで持続的な成長を実現するためには、内部の力だけに頼るのではなく、外部からの支援を効果的に取り入れることが不可欠だ。
齋藤氏は、企業への携わりの始まりにおいて、経営者から理想的なビジョンや目標が語られることが多いが、現実的なリソースが整っていない場合、その理想は実現が難しいと指摘する。企業が語る「やりたいこと」を実現するには、企業が置かれている環境を理解し、その状況に応じた「できること」「やるべきこと」を重ねることが「やりたい事」の絶対的な近道であり、それがない一過性のソリューションには持続可能な成長は伴わない。したがって、齋藤氏は企業の「足元」をしっかりと見つめ、現実的な環境分析を一番重視する。その中でも特に重要なのが「GOAL設定」「3C分析」「SWOT分析」から導き出される戦略抽出であり、優先順位付けした戦略の具体的な戦術の策定であると説いている。
3C分析とターゲットユーザー
特に、3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の三つの要素を分析するフレームワークであり、企業の戦略立案において極めて重要な役割を果たす。齋藤氏は、特に自社のサービスや商品のターゲットユーザーについての解像度を深く掘り下げることが、成功への鍵だと強調する。「自社のサービス・商品のターゲットユーザーがどのような生活をしているのか?そのユーザーのペルソナをさらに新たに分析し、そのターゲット層と関連するものが共創において有効である」。
実際、前述のアニメのコラボ案件はその典型的な実例であり、齋藤氏の言う「ターゲット層と関連するもの」をうまく活用することによって、企業のブランド価値を高めると同時に、消費者との強い共感を生む結果となった。
内部環境の分析とメンバーの思い
また、齋藤氏は「内部環境」の分析の重要性も強調している。社内のメンバーがどのような思いで業務に取り組んでいるかを理解し、組織全体の方向性を整えることが成功には欠かせない。齋藤氏は、1 on 1の面談を通じて、メンバーの個々の思いや考えを深く掘り下げることを実践している。その際に重要な質問は、「メンバーが今携わっている業務で目指すことは何か?」と「現在その足枷になっていることは何か?」である。これにより、メンバーの個人の目標と組織全体の目標を整合させ、相乗効果を生み出すことができる。
さらに、齋藤氏は「人生の目標」とも絡めて、メンバーのビジョンを理解し、組織内での成長の道筋を明確にすることが大切だと考えている。個々のメンバーが人生の目標に向かって進んでいる感覚を持ちながら、企業のビジョンと共鳴させることが、組織の強さを引き出し、持続可能な成果を上げるための鍵となる。
顧問と生成AIの関係性
現代は、生成AIに質問を投げかければ、瞬時に多くの回答を得られる時代である。しかし、それでも顧問の立場は揺るがないと齋藤氏は考えている。
「生成AIが提供する回答は『形式知』に過ぎない。形式知とは、あくまで言葉やデータ、数値として表現可能な知識であり、それ自体は非常に有益であるが、それだけでは組織を動かす力にはならない。」と齋藤氏は強調する。
組織のトップを説得し、その情報を「腹落ちさせる」ことが重要だ。トップがその知識や情報を納得し、自らの意思決定に結びつけるプロセスこそが、最終的な成果を生み出す基盤となる。ここで顧問が果たすべき役割は大きい。顧問は単に形式知を提供するだけではなく、それを実際に活用できる形に変換し、組織の意思決定プロセスに適用するための道筋を示す。顧問は「暗黙知」—つまり経験や直感に基づいた知識—も提供しているのだ。
商談の際に相手の反応を見て柔軟に戦略を変えることができるのも、まさに暗黙知に基づく判断力によるものである。人間は過去の経験や状況に基づいて瞬時に判断を下し、柔軟に対応する能力を持っている。これこそが、生成AIでは模倣できない部分であり、AIがいくら情報を提供しても、最終的に行動に結びつけるための判断は人間の手に委ねられている。
「顧問と生成AIは、相互補完的な関係にあるだろう。」
これは、組織とAIの関係性を示す一つの示唆である。
聞き手/The Lodges 代表 長澤
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